症例で学ぶ画像の見方

頭部CT画像の見方:急性外傷性血腫を捉える

Tags: 頭部CT, 外傷, 硬膜下血腫, 硬膜外血腫, 急性期

はじめに

頭部外傷の画像診断において、頭蓋内出血の有無を確認することは最も重要なステップの一つです。特に急性期の外傷性血腫は、患者さんの予後に直結するため、迅速かつ正確な評価が求められます。放射線技師として、頭部CT画像からこれらの病変を的確に捉えるスキルは必須と言えます。

この記事では、頭部CT画像で遭遇する機会の多い急性硬膜下血腫と急性硬膜外血腫に焦点を当て、それぞれの画像所見の特徴と、実際の画像を見る際のポイントについて解説します。

症例提示:急性外傷性血腫の画像所見(解説パート)

頭部外傷後の患者さんのCT画像を見る際、まず確認すべきは、頭蓋内に出血を示す高吸収域がないかです。特に、脳の表面に沿った領域や、硬膜と骨の間に注意を払う必要があります。

急性硬膜下血腫

急性硬膜外血腫

これらの血腫は急性期にはCT値の高い(白く見える)高吸収域として描出されますが、時間経過とともにCT値は低下し、亜急性期や慢性期には等吸収域や低吸収域に変化します。急性期では、周囲の脳実質とのコントラストが明瞭なため比較的見つけやすいですが、等吸収域に変化した場合は見落としやすくなるため注意が必要です。

画像の見方のポイント

頭部CT画像で急性外傷性血腫を効率的かつ正確に評価するためには、以下の点に留意して画像を見ることが推奨されます。

  1. 全体像の把握: まずは全スライスを通して、脳の全体的な状態、脳室の形やサイズ、正中構造の位置などに異常がないかを確認します。
  2. ウィンドウ設定: 脳実質用のウィンドウ(通常、W:80-100, C:30-40程度)と、骨用のウィンドウ(W:2000-3000, C:500程度)を切り替えながら観察します。骨窓では、骨折の有無を確認します。骨折線は、硬膜外血腫と関連が深いため、注意深く観察します。
  3. 脳表と硬膜の評価: 各スライスで脳表に沿って、三日月形や凸レンズ形のような異常な高吸収域がないか、丁寧に観察します。特にテント上(大脳)だけでなく、テント下(小脳、脳幹)や大槽などの脳槽にも注意が必要です。
  4. 左右対称性の確認: 左右を比較しながら、脳溝の広がりや脳室の形に左右差がないか確認します。非対称性は、脳の圧迫や浮腫を示唆する場合があります。
  5. 出血の広がりと形状: 見つかった高吸収域が、縫合線を越えているか、あるいは縫合線で境界されているかを確認し、硬膜下血腫か硬膜外血腫かを鑑別します。
  6. 微量の出血: ごく少量の硬膜下血腫などは、脳溝内や大脳鎌に沿った薄い層状の高吸収域として見られることがあります。見落としやすいので、拡大して注意深く観察する必要があります。

臨床的な意義・注意点

急性外傷性血腫、特に硬膜外血腫は「Lucid interval(意識清明期)」を伴うことがあり、受傷直後は意識がはっきりしていても、時間の経過とともに急激に症状が悪化する場合があります。これは緊急の外科的処置が必要となる状態であり、迅速な画像診断と臨床医への情報提供が非常に重要です。

放射線技師としては、以下の点に注意して業務にあたることが求められます。

まとめ

この記事では、頭部CT画像における急性外傷性血腫(硬膜下血腫、硬膜外血腫)の見方について解説しました。

頭部CT画像読影の基本は、系統立てて注意深く観察することです。日々の業務で多くの症例画像に触れる中で、様々なパターンを経験し、画像を見抜く力を養っていただきたいと思います。