症例で学ぶ画像の見方

副鼻腔CT画像の見方:副鼻腔炎をどう捉えるか

Tags: 副鼻腔炎, CT, 画像診断, 頭頸部, 放射線技師向け

はじめに

副鼻腔の疾患、特に副鼻腔炎は日常診療で頻繁に遭遇する疾患であり、診断においてCT検査が重要な役割を果たします。X線写真と比較して詳細な骨構造や軟部組織の評価が可能であり、病変の範囲や性質、合併症の有無などを正確に把握するために不可欠です。

この記事では、副鼻腔炎のCT画像を見る際に注目すべき具体的なポイントを、実際の画像を見ることを想定した解説を通じて学んでいきます。経験3年程度の放射線技師の皆様が、自信を持って副鼻腔CT画像を読影できるようになるための一助となれば幸いです。

症例提示(解説パート)

副鼻腔CT画像を見る際には、まず副鼻腔とその周囲構造の正常解剖をしっかりと理解しておくことが重要です。上顎洞、篩骨洞、前頭洞、蝶形骨洞という4つの主要な副鼻腔が対象となります。

画像を開いたら、まず軸位断像と冠状断像の両方を観察します。副鼻腔炎の典型的な画像所見としては、副鼻腔腔内の粘膜肥厚や貯留液が挙げられます。

例えば、上顎洞の冠状断像で、洞底からドーム状に盛り上がった軟部陰影を認める場合、これは粘膜肥厚やポリープを示唆する所見です。また、洞腔内に液体貯留を反映して水平面(fluid level)が見られることもあります。軸位断像では、副鼻腔全体に炎症が波及している様子や、鼻腔や篩骨洞への影響を確認できます。

篩骨洞は多数の小腔からなり、炎症が起こると個々の蜂巣が曇りガラス状に見えたり、全体が混濁したりします。前頭洞や蝶形骨洞は比較的単一の腔ですが、ここにも粘膜肥厚や貯留液が生じることがあります。

さらに注目すべきは、副鼻腔の自然口複合体です。これは上顎洞、前頭洞、篩骨洞が鼻腔へ開口する重要な通路であり、この部位の狭窄や閉塞は慢性化の原因となります。画像では、中鼻道周辺の骨や粘膜の状態を注意深く観察し、通過障害の有無を確認します。

副鼻腔炎の画像所見は病態によって多様です。急性期には貯留液や急性の粘膜肥厚が主体ですが、慢性期ではより広範な粘膜肥厚、ポリープ形成、さらには副鼻腔の骨壁の肥厚や破壊を伴うこともあります。また、真菌性副鼻腔炎では、副鼻腔内に高吸収域の物質(真菌塊など)を認めることが特徴的です。

画像の見方のポイント

副鼻腔CT画像読影のポイントをいくつか挙げます。

  1. 全副鼻腔の評価: 一つの副鼻腔だけでなく、全ての副鼻腔(上顎洞、篩骨洞、前頭洞、蝶形骨洞)および鼻腔の状態を系統的に評価します。
  2. 左右差の確認: 左右の副鼻腔を比較することで、異常をより見つけやすくなります。
  3. 骨窓画像の活用: 骨窓画像で観察することで、副鼻腔の骨壁、鼻中隔、鼻甲介、自然口複合体などの骨構造の詳細な変化(肥厚、破壊など)を評価できます。炎症が眼窩壁や頭蓋底に波及しているかどうかの評価にも重要です。
  4. 軟部組織窓画像の活用: 軟部組織窓では、粘膜の厚みや貯留液の性状、ポリープや嚢胞、腫瘍などの鑑別を評価しやすくなります。
  5. 多断面観察: 軸位断、冠状断、矢状断の全ての断面で観察することで、病変の三次元的な広がりや周囲組織との関係性を正確に把握できます。特に冠状断は、上顎洞や篩骨洞、自然口複合体の評価に有用です。
  6. 自然口複合体の評価: 副鼻腔炎の病態生理において中心的な役割を果たすため、この領域の開通性を慎重に評価することが重要です。
  7. 合併症の検索: 副鼻腔炎の合併症として、眼窩内合併症(眼窩蜂窩織炎、眼窩膿瘍など)や頭蓋内合併症(硬膜外膿瘍、脳膿瘍など)があります。これらの合併症を疑う所見(眼窩脂肪織の混濁、眼筋の腫脹、硬膜外の異常陰影など)がないか、注意深く観察します。

臨床的な意義・注意点

放射線技師として副鼻腔CT検査に携わる上で、臨床的な意義や注意点を理解しておくことは重要です。

まとめ

副鼻腔CT画像は、副鼻腔炎の診断、重症度評価、合併症の検索、治療方針の決定において極めて有用な検査です。画像を見る際には、正常解剖を基準に、粘膜肥厚、貯留液、骨の変化、自然口複合体の状態、そして周囲構造への影響を系統的に評価することが重要です。

この記事で解説したポイントを参考に、実際の症例画像に触れることで、副鼻腔CT画像の見方に対する理解がさらに深まることを願っております。常に最新の知識を取り入れ、自信を持って臨床に取り組んでいきましょう。