症例で学ぶ画像の見方

足関節X線画像の見方:骨折線をどう捉えるか

Tags: 足関節, X線, 骨折, 画像の見方, 整形外科

はじめに

足関節の骨折は、比較的遭遇頻度の高い症例の一つです。転倒やスポーツ外傷など、様々な機序で発生し、その形態も多岐にわたります。放射線技師として、これらの骨折線を正確に捉え、診断に有用な画像を提供することは非常に重要です。しかし、わずかな骨折や複雑な形態の骨折は、見落とされやすいこともあります。

この記事では、足関節X線画像における骨折線の基本的な捉え方、見落としやすいポイント、そして実践的な画像評価のコツについて解説いたします。

症例提示(解説パート)

足関節のX線撮影は、通常、正面(Anteroposterior: AP)、側面(Lateral: Lat)、そしてMortise(またはAnkle Mortise, oblique)の3方向で評価を行います。これらの方向で、脛骨遠位端(特に内果、後果)、腓骨遠位端(外果)、距骨、踵骨の一部、舟状骨の一部などが描出されます。

これらの画像を見る際には、まず全体の骨のアライメントに異常がないかを確認し、次に各骨の皮質骨をエッジに沿って目で追っていくようにします。不自然な膨隆、陥凹、段差がないか、そして線状の透過像や硬化像がないかを探します。特に、骨隆起部や靱帯付着部周囲は剥離骨折が発生しやすいため、注意深く観察することが重要です。

画像の見方のポイント

足関節X線画像で骨折線を捉えるためには、以下の点を意識すると役立ちます。

臨床的な意義・注意点

足関節骨折の診断は、適切な治療方針(保存療法か手術療法か)を決定するために非常に重要です。特に、骨折が足関節の安定性に関わる部位(例: 内果、後果、脛腓靱帯結合部)に及んでいるかどうかが予後に大きく影響します。Danis-Weber分類は、腓骨骨折の部位に基づいて脛腓靱帯結合損傷の合併を予測する際に用いられる代表的な分類の一つです。放射線技師は、単に骨折線の有無だけでなく、骨折の部位や形態、転位の程度、関節面の関与、関節裂隙の状態などを的確に描出することが求められます。

撮影時には、正確なポジショニングが不可欠です。特にMortise像では、距骨滑車が脛骨と腓骨の間で中央に位置し、関節裂隙が均一に描出されるように、適切な内旋角度で撮影する必要があります。不適切なポジショニングは、骨折線の見え方を不明瞭にしたり、関節裂隙の評価を困難にしたりする可能性があります。患者さんの疼痛を考慮しつつ、可能な限り正確なポジショニングを心がけましょう。また、単純X線で診断が難しい場合や、関節内の評価が必要な場合には、CTやMRIといった追加検査が必要となることがあります。

まとめ

足関節X線画像における骨折線の評価は、丁寧な観察と解剖学的理解に基づいています。AP, Lat, Mortiseの3方向の画像を組み合わせ、皮質骨の連続性、骨梁の変化、関節裂隙の状態などを系統的にチェックすることが重要です。特に、見落としやすい微細な骨折や、足関節の安定性に関わる部位の骨折には十分な注意が必要です。正確な撮影技術も診断精度を高める上で不可欠です。日々の業務で様々な症例に触れる中で、観察眼を養い、臨床に役立つ画像を提供できるよう努めていきましょう。