症例で学ぶ画像の見方

腹部CT画像の見方:胆道結石をどう捉えるか

Tags: 腹部CT, 胆道, 結石, 画像の見方, 放射線技師

はじめに

腹部CT検査は、消化器疾患の診断において非常に重要なモダリティです。日常業務において、腹部CT画像を扱う機会は多いかと存じます。その中でも、胆道系の疾患は頻繁に遭遇するものであり、特に胆道結石は多くの症例で認められます。

胆道結石は、無症状の場合もあれば、急性胆嚢炎や急性胆管炎、さらには急性膵炎といった重篤な合併症を引き起こす原因となることもあります。放射線技師として、正確に胆道結石を捉え、その存在や位置、あるいは合併症の有無を示唆する所見に気づくことは、迅速かつ適切な診断・治療に貢献するために不可欠です。

この記事では、腹部CT画像における胆道結石の基本的な見方と、見落とさないためのポイントについて解説します。実際の症例画像を想定しながら、どこに注目すべきかを具体的に学んでいきましょう。

症例提示:胆道結石の画像所見

腹部CT画像で胆道結石を評価する際には、主に以下の点を観察します。

まず、胆嚢に注目します。胆嚢内に高吸収域の結石が見られる場合があります。これは石灰化を伴う結石であり、CT値が高いため比較的容易に発見できます。結石は単発または多発性に見られ、大きさも様々です。体位によって胆嚢内で移動する結石もあれば、胆嚢頚部に嵌頓している場合もあります。嵌頓している場合、胆嚢の腫大や胆嚢壁の肥厚、周囲脂肪織の濃度上昇といった急性胆嚢炎を示唆する所見を伴うことが多いです。

次に、胆管を確認します。胆管は、肝臓内の肝内胆管から左右肝管、総肝管、そして総胆管へと続きます。結石はこれらのどの部位にも発生し得ますが、特に総胆管に結石が見られることがあります(総胆管結石)。総胆管結石の多くは胆嚢結石が落下したものです。総胆管結石が存在する場合、結石より上流の胆管(総肝管、左右肝管、肝内胆管)は拡張を示すことが典型的です。結石が高吸収域(石灰化)を示すこともありますが、コレステロール結石などは等吸収域や低吸収域に見えることもあり、注意が必要です。等吸収域の結石は、胆管拡張という間接的な所見や、造影CTにおける胆管内の造影剤の欠損像として捉えられることがあります。

胆管の走行を丁寧に辿ることが重要です。特に総胆管の遠位端は、十二指腸や膵頭部の背側に位置しており、周囲の構造物と紛らわしく、見落としやすいポイントの一つです。総胆管は膵頭部の中を走行し、膵管と合流してファーター乳頭として十二指腸に開口します。この遠位端に嵌頓した結石は、急性膵炎の原因となることもあります。

画像の見方のポイント

胆道結石を捉えるための実践的なポイントをいくつかご紹介します。

臨床的な意義・注意点

放射線技師として、胆道結石に関する臨床的な知識も持っておくと、より質の高い検査や画像評価に繋がります。

まとめ

腹部CT画像における胆道結石の評価は、位置(胆嚢内、胆管内など)、性状(石灰化の有無、CT値)、大きさ、個数、そして合併症を示唆する周囲臓器の変化に注目することが重要です。多断面観察、適切なウィンドウ設定、総胆管の丁寧な追跡は、見落としを防ぐための鍵となります。

胆道結石は頻繁に遭遇する疾患であり、その画像所見を正確に捉えることは、放射線技師の重要なスキルの一つです。日々の業務で様々な症例画像を観察し、経験を積むことで、より迅速かつ的確な画像評価が可能になります。この記事が、皆様の学習の一助となれば幸いです。