症例で学ぶ画像の見方

腹部US画像の見方:急性虫垂炎をどう捉えるか

Tags: 腹部US, 虫垂炎, 超音波検査, 画像診断, 画像の見方, 腹部救急

はじめに

腹部超音波検査(US)は、急性腹症の診断において非常に有用なモダリティです。特に、急性虫垂炎の診断においては、非侵襲的でありながら比較的高い診断能を持つため、第一選択とされることも少なくありません。しかし、虫垂の位置が多様であることや、腸管ガスなどの影響を受けやすいことから、観察が難しい場合もあります。

この記事では、腹部USによる急性虫垂炎の診断に焦点を当て、US画像で虫垂炎をどのように捉えるか、見落としを防ぐために注目すべきポイントについて、実践的な解説を行います。

症例提示と画像所見の解説

USで虫垂を観察する際に、まず盲腸の解剖学的位置を確認することから始めます。右下腹部の腸骨稜の少し頭側、鼠径靭帯の尾側に位置することが多いですが、個人差が大きく、骨盤腔内や肝臓の下に位置することもあります。正常な虫垂は径が小さく(6mm未満)、蠕動もなく、周囲の腸管に紛れて描出が難しいことが一般的です。

急性虫垂炎を起こしている場合、US画像には特徴的な所見が現れます。画像を見てみましょう。

これらの所見を総合的に評価することで、急性虫垂炎の診断精度を高めることができます。

画像の見方のポイント

急性虫垂炎のUS検査を行う上で、以下の点に注意することが画像診断の質を高める上で重要です。

臨床的な意義・注意点

放射線技師として、急性虫垂炎のUS検査に関わる上で、臨床的な意義や注意点を理解しておくことは非常に重要です。

まとめ

腹部USによる急性虫垂炎の診断には、虫垂の腫大、ターゲットサイン、周囲脂肪組織の炎症、血流増加などの特徴的な画像所見を捉えることが不可欠です。 Graduated Compression法を用いた系統的な走査、虫垂の多様な解剖学的位置の理解、そして他の疾患との鑑別能力が、正確な診断には求められます。

USは虫垂炎診断において重要な役割を果たしますが、その限界も理解しておく必要があります。放射線技師として、これらの画像所見を正確に捉え、適切な情報を提供することが、患者さんの迅速かつ的確な診断・治療に繋がります。日々の検査の中で、これらのポイントを意識して画像を見る習慣をつけることが、スキルアップに繋がるでしょう。